Prologue

 幼心に、僕たちの兄レッドはとても大きく見えた。
 彼が旅立った頃はポケギアやポケナビなんてあまり普及していなかったから、兄レッドは行く先々のポケモンセンターの公衆テレビ電話を使い、しばしば連絡をくれた。
 ジムバッジのこと、今の手持ちのこと、旅の途中に会った人々……とにかく、色々。それはいつも僕たちの知らない世界で、たまらなく想像力がかきたてられた。
「早く兄ちゃんみたいに旅に出たいね」
「うん。お兄ちゃんに会いたいね」
 僕……真紅とその双子の姉、翡翠。僕たち二人にとって、兄レッドは憧れだった。

 ある日。
「えっ、兄ちゃんがチャンピオン?」
「お兄ちゃんがリーグで勝ったの?」
 その報せを聞いたとき、胸が躍った。僕たちの兄ちゃんが、カントーで最強になった。これほど嬉しいことはない。
 しかし、この報せを伝えたのが兄レッドではなく、その幼なじみ、グリーンだったことに違和感を感じるべきであった。

 それからぷつりと、兄からの連絡が途絶えた。

 僕たちはそれでも不思議に思わなかった。きっと、リーグの仕事が忙しいのだと思っていた。だから連絡をする暇がないのだ、と。



――そして、数年後。



「どういうことなのよ!」
 翡翠がグリーンに詰め寄る。
 翡翠は今先程、ポケモンリーグの頂点に立った。なんの障害もなく。その障害こそが、翡翠の追い求めた兄レッドなのだと信じていたのに。
 しかし出てきたのは、兄ではなくドラゴン使いのワタル。
「お兄ちゃんは、どこ」
「翡翠……」
 グリーンは目を陰らせた。申し訳なさそうに目を逸らす。
 しかし、そろそろ言うべきなのだろう……と、重い口を開いた。

「レッドは……行方不明だ」
 その瞬間、翡翠の目が見開かれた。
「殿堂入りして数秒、レッドはチャンピオンを辞退した。そしてそのまま行方を眩ませた」
 翡翠は放心状態であった。

「嘘、嘘でしょ……じゃあ私は、今まで何のために……」

――――
携帯サイトでやろうと思っている長編のプロローグ。
ここからグリーンやら姉弟やらR団(レッド死ねとか思ってる)がレッドを捜索したり、レッドがR団に乗り込んだり、ジョウトの人たちがそこに絡んだりします。
まだ詳しく決めてないけど☆

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